イジワル上司と秘密恋愛
「春澤」
フロアに戻る途中の廊下で、綾部さんに呼び止められてしまった。
その途端、頭から離れていた昼休憩のことが思いだされる。
「綾部課長……」
けれど、外に出たのがいい気分転換にもなり、私は余裕を持って綾部さんに笑顔を返すことが出来た。
「ただいま戻りました。外は暑いですね、汗だくですよ。でもそれなりにいい収穫があったんで、これから販促のアイディアまとめようと思います」
少し日に焼けて火照った顔をパタパタと仰ぎながら言うと、綾部さんも柔らかな口元にゆるりとしたカーブを描いて微笑んでくれた。
だから私はてっきり綾部さんもさっきの事は忘れてくれて、炎天下の中仕事に励んできた事を「おつかれ」とでも労ってくれるのだと予想していたのに。
「春澤、今夜空いてたらちょっと付き合ってもらえないか」
綾部さんの口から出てきたのは、思いもよらない台詞だった。