イジワル上司と秘密恋愛
目をしばたかせた私に彼は一歩近付き、声をひそめて告げる。
「暑いなか外回りして来て喉渇いただろ。奢るから冷たいものでも飲みに行こう」
「えっと……あの」
綾部さんと飲みに行った事はある。けれどそれは課のみんなと一緒だったから、こんな誘われ方をした事はない。
——違う。綾部さんは汗だくで頑張ってる私を上司として労おうとしてくれてるだけで、きっといつものようにみんなも一緒で……
ありえないと頭の中で必死に冷静になろうとするけれど、高鳴る心臓が図々しい期待を捨てさせてくれない。
そして綾部さんは妖しさを浮かべる瞳で私を捕まえて言った。
「ふたりきりで」