イジワル上司と秘密恋愛
こんなに心臓が痛いほど高鳴ったのは初めてだった。
全身の血液が煮えてしまったのではと思うほど、顔が熱くなって頭までまともに働かない。
私は驚いてしまった表情を隠す事も出来ず、ただ妖しい瞳を見つめ返す。
喉の奥が引き攣れて言葉が上手く出てこない。けれど、心の底で静かに燃えていた恋心が、奥手で臆病な私の頭をコクリと小さく頷かせた。
それを見て綾部さんはどこか含みを持たせた笑みを唇に浮かべると、代わりに切れ長の目元を優しげに微笑ませ、私から一歩離れた。
「あとでライン送る」
それだけ言うと何事もなかったように脇を通り過ぎ、そのまま廊下の奥へと歩いて行ってしまった。