イジワル上司と秘密恋愛

どうしていいかわからず黙ってしまうと、木下くんは再び明るい声で喋り出した。

『なあ、春澤はいつまでこっちにいるの?』

「え、あの、あと一泊して、次の日の夜の新幹線で帰るの」

『そっか。じゃあさ、明日の夜少し会えない?』

「えっ……」

『久々に再会したんだ、一緒に食事でもしよう』

どうしよう……。咄嗟に判断が出来なかった。

彼の言う通り久々の再会なのだから、食事をしてお喋りを楽しんだっていいと思う。

けど、一度は付き合って別れた人とこういう状況になったことのない私は、こんなときどうしていいか分からなくて。けれど。

『良かったらうちの店に招待するよ。店で実際に『Cheers』使ってるところ見に来れば?』

木下くんはそんな巧みな誘い方をするものだから、私は自分の手掛けた商品が彼のお店でどんな風に使われているのか好奇心に抗えず、

「それなら……是非」

と、答えてしまった。

 
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