イジワル上司と秘密恋愛
綾部さんはしばらく言葉もなく立ち尽くしていた。
それから頭の中を整理してるかのように手で額を押さえ、眉間に皺を寄せながら目を閉じる。
……すごく呆れてるよね、やっぱり。ペットのトカゲを勝手に恋人と勘違いして破局しちゃったんだから。
真実を知ったことで、もしかしたらもっともっと嫌われるかも。
そんな怯えが少し沸いたけれど、綾部さんは額に手を当てたまま、ふっと口もとに笑いを零した。
「……そっかぁ、マリリンのせいだったのかあ」
「え?」
「あはははは、春澤の『大っ嫌い』の原因は、それだったんだ」
綾部さんは眉尻を下げ困ったような笑顔で笑い出した。
その表情に、彼の複雑な今の感情が全て表れているように見える。そして。
「……もっとちゃんと話し合えば良かったな、俺たち」
最後に切なそうな笑顔を浮かべて、私を見つめた。