イジワル上司と秘密恋愛
咄嗟に頭には綾部さんの姿が浮かんだけれど、振り払うように慌てて首を横に振る。
——別に綾部さんとはお付き合いしてるワケじゃない。彼にはちゃんと本命の恋人がいて、私のことはただの浮気なんだから。
そう強く自分に言い聞かせると、私は電話の向こうの母に向かって「お見合い、いいよ」と答えていた。
自分でも綾部さんを吹っ切るきっかけを、知らず知らずに探していたのかもしれない。
別にお見合いで結婚しようなどとは思ってないけれど、新しい異性と出会うことで少しでも綾部さんに囚われている自分を解放できたらいいと思う。
こちらの許諾に母は安堵と喜びの声をあげ、私は来週の週末に隣県の故郷の街でお見合いをする事が決まった。
後日、母から送られてきた詳細に寄ると相手の男性は私と同い年で飲食系列の社長をしているということだった。
最近は起業しやすくなったとはいえ、二十四歳で社長とはなかなかアクティブなタイプだと思う。
どちらにしろ、このお見合いで結婚する気も交際するつもりもないので関係ないけれど。