イジワル上司と秘密恋愛

そんな風に主体性のないままお見合いの話は進んでいき、あっという間に当日はやってきた。

実家に帰った私はわざわざ訪問着を着せられ料亭に連れて行かれる。もっとカジュアルなものかと考えていたのでちょっと面食らってしまった。

思っていたより堅苦しい雰囲気になんだか緊張してきたところで、部屋に仲人さんに連れられた相手の男性が入ってくる。

「はじめまして、木下浩輔(きのした こうすけ)です」

仲人さんに紹介されて挨拶をした男性を見て、私はしばらく彼の顔に視線を釘付けにしてしまった。なぜって。

「……木下くん?」

少し大きな口を引き結び口角だけを上げて笑う、その特徴的な笑顔に見覚えがあったからだ。

名前だけを知らされたときはピンとこなかったけれど、彼の笑顔を目の前にして私の記憶がみるみる蘇る。

——木下浩輔……あの、いじめっこだった木下くん?

頭に蘇ったのは小学生の時のあまり楽しくない思い出。五年生のとき同じクラスだったけれど、私はしょっちゅう彼に『ブス』だとか『将来おまえなんか誰も結婚してくれない』だとか、ひどいことを言われていたのだ。

 
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