イジワル上司と秘密恋愛
そんな思い出が浮かび、つい顔を苦々しく歪ませてしまった。
けれど、彼は私とは対照的に表情をパアッと明るく綻ばせる。
「やっぱり、春澤だ。俺のこと覚えてる? 五年のときクラス一緒だったの」
「お、覚えてるけど……」
やっぱりってことは、木下くんはとっくに気付いてたってこと? 相手が小学校の時の同級生の春澤志乃だって気付いてて、このお見合いを受けたの?
「あら? おふたり知り合いでしたの?」
仲人さんが私と彼の顔を交互に見て、驚いたような表情を浮かべた。
「ええ、小学校五年生の一年間だけ父の都合でこの街にいたことがあるんです。そのときの同級生でして……。名前を聞いてまさかとは思ったけど、本当に春澤だったとはなあ」
木下くんの言葉を聞いて、私もさらにあの頃のことを思い出した。
そういえば彼は五年生の一学期に転入して来て六年生になったときにはすぐに他の県に引っ越しちゃったんだっけ。
「偶然ってすごいな」
木下くんはそう言ってニコニコとしていたけれど、ハッキリ言って彼にあまり良い思い出のない私は、ひきつった作り笑いしか返せずにいた。