イジワル上司と秘密恋愛

思わず箸が止まってしまった私の顔をじっと見つめて、木下くんは言葉を続ける。

「お見合いに来たってことは、今彼氏いないんだろ?」

「え……と、うん……」

やっぱり頭には綾部さんのことが浮かんでしまって、口ごもりながら答えてしまった。けれど木下くんは気にしていないようだった。

「もし春澤が良ければさ、東京戻ってからも会ってもらえないかな」

「えっ!?」

失礼なぐらい驚きを露にしてしまう。だってまさか、こんな展開になるなんて思ってもいなかった。

戸惑っている私を見て木下くんは手に持っていた箸を置くと、困ったように一瞬視線を逸らせてからまた戻し、こちらをじっと見据えた。

「やっぱ……春澤から見て俺の印象ってあんま良くないよな」

「そ、そんなこと……」

きっぱり否定してあげたいところだけど口ごもってしまう。

だってやっぱり私の根本にある彼の印象は“いじめっ子”だもの。今はすっかり好印象な大人になったとはいえ、子供の頃の強烈なイメージはなかなか拭えない。

 
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