イジワル上司と秘密恋愛
「お前、転入生の俺にすごく優しくしてくれてさ。すぐ好きになっちゃったんだけど、俺まだガキだったからどうしていいか分かんなくて。だから、こっちを向いてもらいたくて意地悪ばっかしてたんだ」
「そ、そうだったんだ……」
「でも、当たり前だけど意地悪ばっかしてたら笑ってもらえなくなっちゃってさ。それが悔しいからまた意地悪しての繰り返しで……本当に今思うとサイテーなクソガキなんだけど、それでも春澤のことが好きで仕方なかったんだ」
木下くんの話を聞きながら、私は赤くなってきてしまった顔を隠すように俯いた。
子供の頃の話とはいえ、そんな風に自分のことを想ってくれていたなんて。なんだか恥ずかしいような嬉しいような、くすぐったい気分。
「うち転勤族で引越しばっかりしてたけどさ、それでも春澤のことはしばらく想ってたよ。でも、もう二度と会えることもないんだろうなって考えてた。それがまさか、こんな形で再会できるなんて……正直、すごく嬉しかった」
はにかんだように笑う彼の表情からは、それが口からの出任せや軽々しい口説き文句には思えなかった。
私は単純だろうか。さっきまで苦手意識を持っていた彼に、今はすっかり親しみを持ってしまっている。