イジワル上司と秘密恋愛

***

退社時間になり、いつものようにまだ残ってる人達に向かって「おつかれさまです」と挨拶してから会社を出れば、スマートフォンには二件のライン通知が届いていた。

『今度の土曜日、ここでランチどうかな』

レストランのURL付きのトークは、木下くんから早速のデートのお誘い。そして。

『いつものダイニングバーで待ってて。すぐ行く』

まるで命令のように一方的な待ち合わせを指定してきたのは、綾部さん。

この関係の始まるきっかけになったダイニングバーにはあれからまた一度連れて行ってもらったことがあって、どうやら三回目の今日から『いつもの』場所になったようだ。

綾部さんとふたりだけで通じる『いつもの』場所があるのは嬉しい。けれど、今夜はふたりで話したくないと思う。

また彼にお見合いのことを詮索されるのは嫌だし、朝のようなことを言われたらせっかく木下くんとの交際に前向きになりかけている気持ちが萎んでしまいそうだったから。

 
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