もう一度君を  この腕に
私には新たな恋が始まっていた。

入社したての頃は准くんとは毎日のようにしゃべっていたけれど

卓巳さんに声をかけられて

しばらく付き合っていた時は彼とは疎遠になりがちだった。

改めて准くんと話す機会を持ち

常に私に寄り添う彼の控えめな想いと

会うたびに彼に惹かれていく自分を

私はちゃんと意識できた。

私は准くんに支えられていた。

たぶん彼よりも私の方がべったりと好きな気持ちを表に出して

照れ屋な彼をいつも困らせているのかもしれないほどだ。

私が給湯室から自分のブースに戻ると

卓巳さんが上司に帰国の挨拶をしていた。

社長から直接辞令が出たと言っているのが聞こえた。

彼はしばらく上司と話した後静かにフロアを出て行った。

私は卓巳さんのことは以前のように進藤先輩として接しようと決めた。

大人の女性として当然そうあるべきだと思ったからだ。

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