恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「……お前がいくらかばおうとしたって、クロはクロ。無駄な足掻きはやめたほうがいいぞ」
津田の忠告に、桐人は不敵に笑って見せる。
「……疑うのはそっちの仕事。こっちは信じるのが仕事なんでね」
「物好きなヤツ……」
「物好きついでに、現場もちょこっと見せて欲しいんだけど」
津田はしばらく考えた後で、意外にもこう答えた。
「…………わかった。口を利いておく。だが今日は諦めろ。……明日だ」
「サンキュ」
弁護士に情報を漏らし、現場の調査を許したなんてことが知れれば、津田の立場が危うくなるのは当然のこと。
それでも彼が桐人に協力するのは、桐人の実力を知っているからだった。
飄々としているくせに、真実を見抜く力は侮れない。彼は桐人をそんな風に評価していた。
*
桐人が警察署を出ると同時に、ポケットの中でスマホが音を立てた。
それは夏耶からの電話で、彼は不思議に思いながら画面を見つめる。
(……どうしたんだ?)
今朝、夏耶から“体調がすぐれないから病院に行く”という連絡があったばかり。
明日も来れないということだろうかと思いながら、彼はスマホを耳に当てた。