恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


(んなっ……! 私ったらなんでこんな軽い弁護士にときめいてるのよ!)


赤くなった頬を隠すようにくるりと後ろを向いて、瑞枝は言った。


「とにかく……次回も、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそ。あ、できればお手柔らかに」

「……手加減はしません!」


ぴしゃりと言って、荒々しく扉を出て行った瑞枝。

桐人と彼女とのやりとりを一部始終見ていた豪太は、じろりと桐人をにらんだ。


「……相良さんって、ホント罪な男ですね。いったい誰が本命なんですか」

「はは。それがわからないようじゃお前もまだまだだね」

「なんですかそれ」


腑に落ちない顔をする豪太を無視して、桐人はさっき津田から受け取ったメモを開いて病院の住所を確認した。

検査が終わったらすぐに帰れるのだろうか。それとも一日くらい入院するのだろうか。

色々な想像を巡らせていると、豪太が言う。


「そうだ。早いとこ沢野さんに会いに行きましょうよ」

「……だな。ていうか、お前も来るの?」

「だって、今回一番活躍したの、俺じゃないですか!」


(まあある意味そうなんだけど……コイツには一生、空気ってやつは読めないか)


桐人は苦笑して豪太がついてくることに同意し、裁判所を出て夏耶のいるという病院に向かうのだった。




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