恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


ビーフジャーキーを齧っていた彼女は、食べかけのそれで隣の津田を指しながら答える。


「こういう人は基本的に恋愛関係のこととなるとニブイから、もう押せ押せよ。それでやっと私からの好意が本気だとわかると、途端に意識しちゃって可愛いのよ?」

「可愛い津田刑事……!?」


二人の冷やかすような調子に、津田はチッと舌打ちをすると、その話題から逃れるように豪太に話しかけた


「……おい、ピザはまだか」

「そろそろだと思うんですけど……」

「あ、じゃあ俺外見て来るよ。煙草吸いたいし」


桐人はそう申し出て立ち上がり、テーブルの上に置いてあった煙草の箱とライターを手に事務所を出て行く。


(津田刑事の好物は吉野刑事とピザか)


なんてことを考えて思い出し笑いをこぼしながら、階段を降りる。

ビルから出ると、むわりと湿気をはらんだ空気が肌にまとわりついて来て、桐人は日本に帰って来たんだなとしみじみ思った。

そして煙草に火をつけると、彼はそれを咥えながらピザ屋のバイクの姿を探したが、それらしき者はいない。


(五分って言った割には遅いな……)


ぼんやりと周囲を眺めながら、待つこと数分。

辺りは暗くなってきていて、バイクの姿ばかりに注意を払っていた桐人は、彼の方に静かに近づいていた人物が、すぐそばまで来ていたことに全く気付いていなかった。


「先生」


ふと懐かしい声に呼ばれて、反射的に振り向く。

するとそこには、五年という月日が経ってもなお彼の胸の中に居続ける、愛しい彼女の姿があった。



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