恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「……それ、本気でか?」
「う、うん……しゅんぺーの代わりになる人なんて……いないもん」
夏耶がそう言うと、手首をつかむ彼の手にぎゅっと力がこもる。
(……まだ、機嫌悪いの……?)
好きだという答えが正解だと思っていたのに、その答えを聞いた俊平はさらに逆上したように見えた。
ぎらぎらと光る瞳、怒っているときのように荒い息遣い。
(怖いよ……今日のしゅんぺー……)
まるで猛獣にでもなってしまったかのような彼の様子を見ていられなくて、夏耶はふっと彼から視線を外して横を向いた。
けれど、途端に強い力で顎をつかまれ無理やりに正面を向かされる。
そして余裕のない俊平の瞳に心臓が貫かれるような錯覚を起こしていると、目を閉じた俊平の顔が目前まで迫ってきて……
かみつくように強引に、唇を奪われた。
「……んっ! ん―――っ!」
どうしてキスなんてされるのか訳のわからない夏耶は、唇を塞がれたままでじたばたともがく。
けれど、俊平はそんな抵抗などものともせずに、夏耶の制服のボタンに手を掛け始めていた。
(こ、これって……っ)
夏耶の苦手な恋愛小説に登場する、大人の男女が愛を確かめ合う行為。
今の自分の状況が一瞬でそこにリンクして、あんな恥ずかしいことが自分にできるわけないと、夏耶は必死で身を捩った。