恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「え……? ちょっと待って、なんで先生が出てくるの……」
「まんまと騙されたよ。……まさかカヤが男を誘う演技身につけてるなんて思いもしないからな」
「しゅんぺー、お願い、何の話か、説明――――」
夏耶が言い終わる前にベッドの上から退いた彼は、ソファの上に置いてあった彼女のクラッチバッグを開けると、それを逆さにした。
スマホや財布やメイク道具が、バラバラと床に散らばる。
「何してるの……?」
「どこだよ……カメラ……」
「カメラ……?」
「それとも服に盗聴器でも仕込んでたか」
静かに、けれど怒りを滲ませた声で言った俊平は、空になったバッグを放り投げ、再び夏耶の上で四つん這いになる。
涙目の夏耶は目の前で起きていることが全く飲みこめず、身を縮めてごくりと唾を呑みこんだ。
「……脱げよ。隠してるもんあんだろ」
「だから……っ! 私には、何のことか全然……!」
夏耶が声を張り上げると、俊平は何かを諦めたように目を伏せ、乾いたため息を洩らした。
「もういい。……カヤ、お前はもう二度と俺の前に姿を現すな」
夏耶はそれに似た台詞を、過去にも俊平の口から聞いたことがある。
あの日と同じ――いや、思いが通じ合ったと実感した後である分、それ以上の切なさが胸を締め付け、彼女の目から涙がこぼれる。