恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


「……りっちゃん、ごめんね、驚かせて……」


しばらくして席に戻ってきた夏耶は、顔色は悪いのに目だけを真っ赤にして、鼻を啜りながらそう言った。


「夏耶……アンタ、もしかして……」


律子の問いに、夏耶は黙ってコクンと頷いた。

律子は考え込むように目を閉じ、それから申し訳なさそうに言った。


「ゴメン……同窓会の前にさ、俊平のことけしかけたの、私なんだ。そろそろ夏耶とのこと、ハッキリさせなよって」

「そ、なんだ……でも、りっちゃんのせいじゃないよ。わたしたち、自分で考えて、そうしたんだもん……」

「……このこと、俊平は?」


親友を極力傷つけないよう、気遣うような声で律子が尋ねると、夏耶はふるふると首を横に振る。


「そっか……夏耶の気持ちとしては、これから、どうしたいの?」


そう聞かれると、夏耶はお腹に手を当てて、頼りない声を出した。


「……わかんない。全然、わかんないよ。でも、病院行くたび、この子が成長してて……うれしいのに、同時に怖くて……ときどき、思うの。……これ以上、大きくなる前に、堕ろしてしまおうかって……」


最後の方は聞き取りづらい小さな声だったが、律子の耳にはしっかりと聞こえた。

そして、彼女の中に急速にいいようのない怒りが生まれ、手のひらでテーブルを思い切り叩くと、夏耶をにらみつけた。


「……夏耶……見損なったよ……」

「りっ、ちゃん……」

「俊平のことが好きで、だから寝たんでしょう!? その先にある可能性だって、子供じゃないんだからわかることでしょう!?」



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