恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「……なんとか言いなさいよ」
「だから……お前には関係ないって」
「ああそうね、関係ないわよ! だけど、今度ばかりは口を出さずにはいられない」
「……なんで」
――面倒なヤツが首を突っ込んできてしまった。
俊平はそんな気持ちでなかば投げやりになりながら、律子を見る。
彼女は一度唇をきゅっと噛んで、怒鳴りそうになるのをなんとか鎮めると、拳をにぎりしめて言った。
「夏耶が……アンタの子、堕ろそうとしてる」
律子の声は、俊平の耳に確実に届いたはずなのだが、彼はその意味をすぐには理解できなかった。
(俺の……子……?)
その言葉と、同窓会の夜の夏耶との行為が、彼の中で結びつかない。
子供がほしいと言っているのは、夏耶ではなく琴子である。
だからこの頃、俊平は琴子を毎夜のように抱いているのだ。
彼女が妊娠したというなら理解できるが、夏耶とはたった一回寝ただけ。
琴子と違って健康な夏耶が相手というのもあり、勢いに任せて避妊を怠ったことは認める。
しかし、それでうまく妊娠するなんてことがあるはずないと、俊平は薄笑いを浮かべて律子に尋ねる。
「……それ、夏耶の作りバナシじゃねーの? 担がれてんだよ、俺もお前も」
けれど律子は、心底彼を軽蔑したというような顔をして、目に涙を浮かべた。
「……それ……本気で言ってるの?」