20億光年の孤独
息もできない

父さんが死んでもうすぐ7年になる

とても長かった7年間

もうすぐ僕も高3になる
大学生になったらこの家を出る
そう決めたのはずいぶん昔のことだ

離れなければならない
そう思いながら僕は朝を迎える






「拓海ーご飯出来てんのよー
早くおきなさーい」
「あー分かったって!って声デカすぎ!聞こえる
からさぁ、ここ集合住宅なんやから、かんべんしてよ。」
「昨日、お隣からささぎを貰ってね
味噌汁にしたのよ。これがおいしいのよねー」
「げっ、卵焼き焦げてるじゃん」
「砂糖入れたからかなー胃に入ればいいのよ」

アキさんは料理が下手だ
多分あの人は食事はカロリーを摂取するものだって考えている
放っておいたら炭水化物しか食べないだろう

僕の方が料理も上手いだろう
小学生の時のアキさんの手づくり弁当は見るに耐えなかった
何より洗うのが面倒だからって弁当の底にラップをひいてる弁当なんて
恥ずかしくてたまらなかった

あの頃は給食があったから安定的な食事にありつけたけど

今は僕がやるしかない

「拓海のとこももうすぐ春休みでしょ、
いつからなの?」
「来週の火曜日から、でもずっと課外だよ。まったく、休みに早く入っても課外の方がツラいから全然うれしくないね」

「そんなこといって拓海いつも授業寝てばっかじゃない、私は必死こいて勉強してたわ、高校生の時

なのに拓海は頭いいもんね、ほんとにムカつくわね、きっと彰さんもそうだったんでしょうね」
「つまらない授業だけだよ、寝てるのは

それに父さんはは暇さえあれば数学解いてるオタクだったから、寝てないと思うよ、それよりアキさん、時間じゃない、今日会議だから朝早いんでしょ」


アキさんは食器を急いで洗い、家を出た
僕は彼女を追うかのようにリュックを背負い、玄関の扉を開き、そして鍵を締める


駅まで自転車で15分、そして3駅となりの高校に通う

アキさんは隣町の高校で数学を教えている

僕がアキさんに出会った8歳の夏休み、
彼女は22歳だった

アキさんは一浪していたので当時は大学3年

そして今年アキさんは32になる

僕も追いつくように1つ歳をとる


それでも14歳の年の差は変わらない

僕はアキさんにおいつきたくて
勉強もスポーツもひと通りにこなしてきた

身長は悠にアキさんを越え、僕はいつの間にか彼女を見下ろしていた
すると
あんなに大人に思えたアキさんが
こんなに小さなヒトだったことに気づく

多分、父さんはそんなこと
もっとずっと前から気付いていたんだろう
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