思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「あ、じゃあ僕シャワー浴びてくるから、ここで待ってて。優那ちゃん、絶対に男の人に話しかけられても無視してね!」
じゃ、とシャワーを借りに行ってしまった。
私は、お店で冷たいラムネを買い、夕が戻ってくるのを待った。
「そこの可愛い女の子~」
誰かナンパしてるんだろうな。
絡まれた子、可哀想に。
「え……なあ、聞こえてる?」
世の中どこもかしこも必ずそういう人はいるんだなぁ。
早く夕戻って来ないかな。
「えーっと、ピンクの水着で、ポニーテールしてる子~!」
なんだか声が近いな。
それに、偶然私もピンクの水着に、ポニーテール。
ん?
ふっと振り返ると、すぐ近くに男の人が立っていた。
「はぁ、やっと気づいた」
「誰、ですか」
「お、俺と遊ばない?」
あぁ、なるほど。
ナンパですか、ナンパなんですね?
私に。
『優那ちゃん、絶対に男の人に話しかけられても無視してね!』
夕の言葉を思い出す。
話してしまった。
「あっちでさ、友達とスイカ割してるんだよ。よかったら一緒にどう?」
「……」
「急に無視!?」
見るところ、私と同じ高校生くらいかな。
「ごめん、悪いんだけど来てもらえないかな?」
ガシッと手を掴まれ、引かれる。
「え、でも夕が____」
「あああああああ!!」
「うわ、びっくりした。誰だ………って、ひっ…水無月夕!?」
この人、夕のこと知ってるのか。
まさか、同じ高校?
シャワーから戻ってきた夕が、ズカズカとこちらへやってくる。
髪が濡れてペタンコになっていて、変な感じだけど。
「ちょっと、君!!!その手離してくれない!?その子、僕の彼女だから!」
へ、彼女……?
いきなり彼女発言されたけど、きっとこれはこの人から私を救うための口実に違いない。
「特別寮の水無月夕と一緒にいるってことは………まさか、凪宮優那……さん?」
嫌な汗をかきながら、今一度私の顔を確かめる彼。
「ひぃっ、ごめんさい!!」
何をそんなに怖がっているのか知らないけど、手を離してくれたのはありがたい。
「全く、油断も隙もあったもんじゃないなぁ」
「本当にごめんなさい!これは罰ゲームだったんです!!」
「罰ゲーム?」
「はい……罰ゲームで、一人女の子連れて来てみろって。それでできなかったら、15人分のアイスを買わなきゃいけなくて……。あ、ちなみに俺1年の前島誠也(まえじませいや)っていいます」
「そういえば山城くんも言ってた気がする、うちの学校の奴らが来てるって。」
ビーチバレーでもいたんだよね……?顔知らないから、わからなかったけど。
「ふーん、そうなんだ。じゃ、戻ろうか、優那ちゃん」
「ねぇ、私が行けばアイス買わなくて済むの?」
「えっ?あ、まぁ……」
「行くだけでいいならいいよ」
それだけで彼が救われるなら、私はその話に乗ってあげよう。
「え、ちょ、優那ちゃん!?」
「だって、別にこの人悪い人じゃないんでしょ?」
アイス15人分だなんて、大変だろうに。
お人好しかもしれないけど、もし私がアイス15人分買わなきゃいけないことになったらと思うと……
行って連れてきたことを証明するだけで、それがまぬがれるなら行ってあげようではないか。
「まぁ、そうみたいだけどさぁ……」
「じゃあ行ってくる。すぐ戻るから、夕は先に戻ってていいよ」
なんだか夕は乗り気ではないみたいだし。
「そ、そんなぁ……。ぼ、僕も行くよ!」
「あ、ありがとうございます!!」