阿漕荘の2人

お土産

紫子side

「れんちゃん、喉かわいたから入るで」



香具山 紫子が小鳥遊邸にやって来た



「僕の家は喫茶店じゃないよ」

「れんちゃんのコーヒーが美味しいからなり」

「それ、僕の口ぐせ

盗まないでよ」


紫子が2人分のコーヒーをいれて

テーブルに置く

「なんや、わざわざ
お土産貰いに来たのになぁ」


「お土産は貰いに来るものじゃない

いただくものだよ」

練無は紫子に黄色いパッケージの
箱包みを差し出した

「なんやヒヨコかいな
東京バナナやないんかい」

「文句あるならあげません」

「気持ち悪くないか?」

「僕は好きだよ、ヒヨコ

嫌いなの」

「なんでヒヨコの形してるんやろって
思わへん?」

「ヒヨコに恨みでもあるの?」

「可哀想やんか」

「じゃ、ヒヨコの形してる
石コロだと思えば」

「なんで、石コロなんか食わなあかんねん」

「じゃあね…………
ヒヨコの形した石コロのようなお饅頭だと思えば」

「じゃあねって
アレはもともとお饅頭やないか」


「だから、いいじゃん、それで」

「もっと、お饅頭としてプライドをもってほしいな

ヒヨコかて、お饅頭に真似されるようなんでは、面子丸潰れよ。なめられてると
思うわ」

「まぁ、ヒヨコだって
もともと食べられるために生まれて
きたんだよ」

「ああ、なるほど

キミらしいな、ちゃっかり、残酷なこと言って」

「ヒヨコの輪切りとか?
ほら、卵を輪切りにするヤツで」


「若い娘がそんなこと
いっちゃあかんよ」

まぁ、れんちゃんは娘やないけどな


「ああ、そうそう、面白い話があるんだよ」

れんちゃんがこの間、森川くんの
彼女のふりをして
会いにいったことを話した


「………とまぁ

びっくりしたわけだよ」

「…それはいいとして
騙したんだろ、それ。

どうなんや、ひととして」


「騙してないよ

嘘言ってないもん

向こうが勝手に勘違いをしただけだよ」

「…同じやろ、それは」
「全然違うよ

これは認識の違いだもん」

紫子がヒヨコの箱を開ける

なんだかんだでヒヨコを食べる2人

「いいかな?
森川が女装した男連れて来ようと
アフリカ象連れて来ようと
真っ赤なお鼻のトナカイさん連れて来ようと
あっちが
彼女だって思えば彼女なんだよ」


「ごまかしや」

「ごまかしてません」


「ところでしこさん?」

「なんや」

ヒヨコの包みって開けずらいなぁ
あたまが邪魔なんやな


「しこさんのタイプってどんな人?」


「タイプ?
うちは川の流れのように生きてるで」

「しこさんのことじゃないよ」


「だれのこと」

「しこさんが好きな人」


「好きな人のタイプなんて知らへんよ」

「ちがうよ
どんな人が好きかって聞いてるの」


「うーん夢野光一郎かな?」

「えーあの人50過ぎてるよ」

「男は40からだよ」

「あの人、大酒飲みで、毎晩クラブとかで豪遊して、肝臓やられてそうな顔してるよ」

「キミの想像はいちいち具体的やな」

「絶対、酔うとエッチなことしてくるよ」


「別に、恋人になるわけやないやん」

「渋めに弱いんだね、しこさん」

練無は3個目のヒヨコを食べる

ちなみに2人とも頭から食べるタイプだ


「大垣名物の柿羊羹とかも好きでしょ?」

「あれは、甘いで」




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