阿漕荘の2人

聖カトレシア学園 1

紫子side

9月も終わりに近づいた頃、香具山 紫子はz大のフランス語講座に出席していた

大学を4年で卒業する気のない彼女は
スズメの涙もはやミジンコの涙
否、ミジンコには涙腺はないが
まぁ
それくらいしか
大学にはいかない

何故、彼女が今日、大学に行ったか

それはこの日が大安吉日だからだ

彼女にとって宝クジを買うことと
大学に行くことは
対して変わらないのだ

ちなみに宝クジといえば
30分に1人の割合で1000万円以上の高額当選者を出している

誤解を生みそうなので
補足しておくが
宝クジを買って1億円当たる確率は
雷にあたって死ぬ確率より低い


夢があるようでない話である


「なぁなぁ、櫻子さん」

「なんでございんしょ」

「ズカ部の何人か誘って神戸いかへん?」

「えっ!何!どうしたの!」

「……なしてそんなに
嬉しそうなん」

「だぁてえ、神戸でしょ、兵庫でしょ、
そうしたら、ねぇ宝塚でしょ

わたしらの本家じゃないのー」

「…宝塚はズカ部のこと分家とは
認めてないで

それにな、なんや、勘違いしとっけど
宝塚と神戸は遠いで

宝塚って大阪よりやしな」


「はぁ?

清荒神で骨董品みて

宝塚の星組みて

記念館で記念撮影して

サンドイッチ リアン でエビフライサンド食べるのが

神戸の醍醐味に決まってるでしょ」

「いや、それ全部宝塚やし、神戸ちゃうし」

「じゃ何しに行くのよ」

「高校の文化祭に来い言われてんねん」


「ついてけってゆうの?」

「茶道部行かなすぎて誘いにくいし
櫻子はんなら
うちでも一緒に行ける気前の良い子しってはるやろ」


実は紫子は茶道部である

名ばかりの菓子泥棒の茶道部員だ
「んーまぁ、いいけどさぁ

何で文化祭にいかないと行けないの?
私だけじゃダメ?」
「手伝って欲しいことあるんよ」

「何を?」

「ダンス」

「ダンス?YOSAKOIなら出来るわよ」

「ちゃう、なにその表記?
なしてかっこつけんの?」

「なんで、ダンスの手伝い?文化祭でしょ?」

「後夜祭で踊るやんか、ダンス」

「あーあのマイムマイムみたいなのね」

「マイムマイム?
キャンプファイヤーちゃうで!

そんなの、社交ダンスに決まっとるやんか」

「はぁ?社交ダンス?

高校生の文化祭で?

踊るわけないでしょ!
盆踊りでもしてなさいよ!!」

「人が足りないんで困ってるんや」

「……あれ?
あんたの高校って女子校じゃない?

何が困ってるの?」


「そうやで、女子校や

うちの学校はな、隣の男子高と毎年

文化祭かぶらせんの

そんで、ダンスを一緒に踊るやけど

今年はうちが多いんだか
向こうが少ないんだかで

男子が足りないねん」


「…ズカ部はみんな女よ」

「男装して欲しいねん」


「なんでー??

普通に男雇えばいいじゃん!」

「アホか!


そんな下心ありきの怪しい男雇って

なんかあったらどうすんねん」

「あーそうだった

あんた、芦屋のお嬢様だったんだ


あんたの学校の名前なんていうの?」

「聖カトレシア学園」

「うわっ!カンジワル!」

「なんでやの」

「何人欲しいの」

「10人くらいかな?」

「……交通費とか宿泊費とかは?」

「学校からでるわ、そんなん

あとバイト代もな」

「なんと!!
それ早くいいなさいよ!!

この桜花 櫻子が腕によりをかけて

お墨付きの美青年たち集めるわ!!

世の中、しょせんは金よね

お金のためならなんでもするわ」


「……あんたのそういうとこ

うちは好きやで」

「それにズカ部としても

ダンスの練習が出来て、尚且つ、相手は

本物のお嬢様!

萌えるわ!」

「漢字変換まちごーとるで」

「まぁ、いいじゃない神戸の旅

エキゾチック街道、北野異人館巡り、

ハーバーランドでモザイク探索

夢のパリジェンヌ気分ね!」

「何ゆうてますの、
関西といったら
お好み焼き

兵庫といっても
お好み焼き」

「…赤石焼きはたこ焼きじゃない……

それに私はピザの方が好きよ」

「わかっとらんな
ピザもたこ焼きも赤石焼きも

結局は

お好み焼き。

みんなお好み焼きの範疇や」


「全然違うわ」

「いや、同じや、

お好み焼きゆうたら、

何を焼こうが、どう焼こうが

そこがお好みなんやも

むっちゃ範囲が広い、包容力がある

食べ物なんや

まぁ、ゆうてしまえば、

熱を加えて食べるもんは

みんなお好み焼き言うても過言やないよ」



「………過言よ」

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