阿漕荘の2人
練無side



「しこさんー?

なにをしてるの?」

「やぁれんちゃん、
スーツ似合うやないか

花嫁はんの父親役か?」

真っ黒なドレスに身を隠したしこさんと
同じく真っ黒なスーツ姿の清見さん
だった

「2人とも遅かったなぁ

舞踏会に遅刻なんて、シンデレラ失格や

男性諸君ももう入場するで」

「いい夢をご覧になっていたのでしょう
小鳥遊様」


「いい夢ってー」

「やめなさい」
二階堂さんが割って入ってきた


「こんにちは、黒バラ姫様

私は現白バラ姫 二階堂 りん」

彼女は僕らに会ったとき同様に
白いドレスを持ち上げて
一礼をした

「おーこんばんわ

うちが黒バラ姫の香具山 紫子


って言っても

卒業して2年経ってるし

二階堂さんは知らんだろうな」

「いえ、白バラは黒バラあっての

もの

学園は貴方をお待ちしていました」

「そうか……これは、餞別のバラや

受け取れや」

「ありがとうございます」

「ここ、あんたの席やったな

返すで」

「待って、しこさん!


何処行くの?」

清見さんと紫子は席を
たち、

今、自分たちが歩いた赤絨毯の上を

ドアに向かって歩きだす


紫子が練無の肩に手をつき

そっと小声で言う


「れんちゃん、よく聞け

裏切りものがいる

うちは今、それが誰なのか追っているんや

誰も信用するんやないで」

「黒バラ様!!!

行きますよ!!」


清見が声を上げた

紫子はびっくりして清見を見る

「ごめんなー

れんちゃんがうちのドレス姿に惚れた

言うててなー」

「しこさーん

そのドレス、僕の方が似合うっていった

んだよー」

しこさんが清見の後を追いながら

一度だけ僕をみた


その顔がやけに悲しそうだった
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