阿漕荘の2人

サンタクロースの忘れモノ 4

練無side

時刻は夜の10時をまわっていた


今夜は宮下 アキに会い、バイトの説明を受けた


僕が彼女について新しく知った情報は
彼女がいま大学4年生で
来年は数学の教師になるらしい


公務員採用試験は夏に行われて
合格したため、今は最後の大学生活を楽しんでいる


それだけだ




ードスンっ

部屋の外で、何か大きなもの音がした



僕は不信に思って、廊下に出る


階段の方から話し声がする


僕は恐る恐る階段に向かう



「なんだ、森川じゃん」


「これ、どうにかして」


森川が指差した先には
階段の上に座り寝転ぶしこさんだ


なんてバランス良く寝ているんだ



「しこさん………何してるの?」

「酔い潰れた」


「消化器を持って?」

彼女は気持ちよさそうに
消化器を抱き枕にしている


「押し花でも作るんじゃないかな」


「消化器で?」

「そう、もしくは漬物かな」


「どうしてこんなに酔ってるの」


「僕はとめたよ」


しばらく沈黙が流れる

僕は考えながら、暗い階段を降りる

「飲んできたの?」


「そうだよ」


「2人で?」


「そう」

まさか、しこさんが森川と2人で飲みに行くなんて考えてもいなかった

そこまで仲の良いわけではないと思っていたからだ

「しこさんが飲みたいって言ったの?」

「飲もうと言ったのは彼女だけど、
食事に誘ったのは、僕だ」


「食事に誘った?お前が?」

「そう」

「なぜ?」


「抱きしめようか、食事に誘おうか悩んで、後者にした」

僕は、森川の言葉を聞き終わる前に
彼の胸元を掴んだ


「危ない………ここは階段だ……」


「今、お前を此処から突き落としてもいい」


「そういう顔してたんだ」


力を込めて、森川を引き寄せる


「誰がだよ!!」

「放っておけなかった」

「だから、誰が!!」

「いつ泣いてもおかしくない顔してた」


「お前、本気か?」

「なんの話?」

「そうなのかって聞いてんだ!!」

「小鳥遊らしくない」

「お前だけはダメだ………」


「なぜ?」


長い沈黙が

感情的になった僕を落ち着かせる



僕は大きく、深く呼吸をする



瞳を閉じる

耳を澄ます



「れんちゃん…………?」


彼女が僕の名前を呼ぶ


「どうしたん?」


「しこさん、早く部屋に戻りな」


僕は階段を上って自分の部屋に戻る

鍵を掛けて、靴を脱ぎ、
洗面所で顔を洗う

冷たい水が僕を引き締める





ずっと悪い予感がしていた



森川に対しても



しこさんに対しても




森川は女を食事に誘う男じゃない



どんな理由があろうとも………


それは変わらない



あの2人は引き寄せてはいけない



ずっと、そう思っていた



僕の予想が正しければ




きっと



きっと




森川は彼女を好きになる




そして、彼女も





彼を求める





僕は2人の友人だから






それがよくわかる





あの2人は掛け合わせてはいけない





僕自身がわかっている





なぜなら




僕の予想は外れないから……………
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