阿漕荘の2人
練無side


「えっ……………」



暗い公園のベンチ



月夜が女の顔を照らす





その女は僕が恋い焦がれた唯一のヒト






その男は僕の親友



女は男の名を呼ぶ




僕ではない男の名を




僕は男に近づく




男は立ち上がり僕を見る




女が僕に気づく




その大きな瞳で僕を見る




くちびるを隠しながら……………










「森川……………」






「こんばんは、小鳥遊」







「お前、今なにした」







「見たままだよ」







「どうして」




「僕を見て欲しかったからかな」





僕はいつの間にか
森川の顔を思い切り殴っていた



何度も、



何度も、




女は叫んでいた



僕を止めようとしていた




僕は女の手を振りほどく




男はなにも言わない



抵抗もしない




後悔した





男を殴って得られたものは





右手の痛みと




女の涙
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