阿漕荘の2人
紫子side

「…………んっ………」

紫子を壁に押し当てた練無は
幾度となく彼女のくちびるを攻める


「……あっ……」



「しこさん…………声、がまん」



紫子はつぶった目を開けて
練無を見る


「れんちゃん………やめて………んっ」



「しこさん………いいとしか聞こえないよ」


練無は角度を変えて、もう一度、紫子の甘美を味わおうとする



が、しかし………


「やめてって………ゆうてるやろ!!」


紫子は離された右脚で勢いよく
練無の腹上目掛けて蹴りをいれる



練無は予期せぬ攻撃に受け身を取ることもままならず、
そのまま勢いに任せて
ベッドからずり落ちる



「わあ!………いったあ……!!」


練無は落ちた衝撃で、カーペットのひかれた床に頭をぶつけた




「いったあ……なにすんのさあ!」




「当然の報いや!くたばれ!!」




「だからって、これは酷くない?!
男だったら殴ってたからね!!」





「キミが女だったら、腕折ったるで!!」


紫子は荒々しい呼吸を整えながら
言い放つ



「だいたいなあ、なんなんなあ、
キミ、アレやん、かなりがめついよ、
もうちょい、抑えられへんのかい

うちやってなあ、昨日の今日で、
どうなってんやって感じやねん!!

それをな、うちのこと押さえてなあ、
あーもう、

順序ってもんがあるやろ、あーん」



練無は頭をおさえながら、立ち上がる

腰にも響いたようで、動くだけで激痛がはしる



「順序って、僕は、4ヶ月前から告白してるんだからね!!

めちゃくちゃ我慢してるの!!
それに、しこさんのファーストキスは森川に奪われるし!

イライラしてんの!!」




「はあ?4ヶ月前?告白?
なにデマかましてんねん?

そんな、歩くデマカセ野郎ななりしよって、
だいたいなあ、今のキミ、鏡で見てみいや、
女の子なんやで、
キミはいいとして、ウチは変な気分なんやで!」




「告白はしてんの!しこさんが気づいてないだけで、昨日で3度目なの!!」




「………気づいてなかったなら、意味ないやん
寝てる時にでもしてたんやろ!
とんだヘタレやな!」




「ヘタレだと………?!
僕は確かに見た目は美少女だけど………」


「自分でゆうなや」


「………ヘタレはない!!
むしろ、中身は漢!!
画数多い方の漢!!」



「……はいはい、わかりましたよ、
うち、大人やし、折れてあげますよ


それに、ぼくちゃん、うちのこと大好きみたいやし、なあ?


あーモテる女はつらいなあ、なあ?」



「ああ、もう、この力道山女、布団ロールしてやりたいな!!

なんで、こんな女のこと、好きなんだろう!」


「……………。」


紫子は耳まで真っ赤にして
そっぽを向いた


不思議に思った練無は彼女に近づき
尋ねる



「あれ?えっ?なんで、赤くなるの?
へっ?力道山がそんなに気に入ったの?
実はファン?
それとも、布団ロールされたいの?」


「うっ、うるさいなあ………ええやんけ、べつに…………」


「そういえば、僕まだ、しこさんの気持ち聞いてないんだよね

ねえ、僕のことどれ位好き?ねえ?」

練無が紫子との距離を徐々に縮める
紫子はそれを拒むように
後ろに引く

「それ、どうやって、答えんねん?」


「10段階評価で」


「10段もあんのかい!」


「例えば、結婚して欲しいくらい好きとか、もう僕だけしか考えられないくらい好きとか」


「それが10なん?」



「それはしこさん次第だけど」




「そんなこと言われても、気づいたの昨日やし………」


「昨日?!」


「そうやけど………」


「なにそれ!ギリギリじゃん!
下手したら振られてんじゃんか!
ずるいよ!」


「なにがずるいねん?」

「だってえ、僕は半年近く片想いしてたのに、しこさん、たったの1日?

信じられない、不平等だ」


「なにを争ってんねん
だいたい、うちは1日も………」



「1日も?」



「いや、なんでもない」




「ちゅうした仲だよ、教えなさい」




「ちゅうって………」




「なんだかなあ、全然足りないんだよなあ」



「なにがやねん」




「まあ、覚悟しててね
僕、気が短い方なんだ」




「気が短いってどれ位なん?」




「うーん、15㎝くらい?」




「測ったんか?」




「さあ、見た目が定規1本くらいかなーって」





「…………なあ、なんの見た目?」





「気になる?しこさんなら測っていいよ」





「…………何の話なん?」






「んー、大人の話」














(すみません、本当に
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