真実の愛のカケラ
その間、ずっと携帯が鳴っている。
出ないのは出なくても良いと判断したから。
電話の内容なんて予想がつく。


まずはそこから決着をつけにいくか。


到着したのは車を走らせて30分のところにある老舗料亭。
広々とした日本庭園を横目に、奥の和室へと案内される。


「どうぞ」


ふすまが開かれた瞬間、中にいる3人のうち2人はすぐにこちらを向く。
1人の女性は逆方向に目をやったまま。


「な、なんでそんな格好なんだ。
早く着替えてきなさい」


視線で咎めてくる祖父さん。
その向かいの席には俺の見合い相手として呼ばれた若い女性とその父親らしき男性。


どうせ本人抜きで勝手に話が進められた見合いだろ?
その証拠に、その女性だって嫌そうにしてるじゃないか。


「…何をしておる」


動かない俺によって、室内の空気は疑問を含んだものに変わった。
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