指先からはじまるSweet Magic
クスクス笑いながら、ショートカットの美女が少し肩に力を入れたのがわかった。
途端に、ここから見える圭斗の足がピクッと跳ねる。


「ん、あっ……」


圭斗のくぐもった声。
それはどう聞いても、私が圭斗に聞かせてしまった快感の声に通ずる物があって、私は思わずギュッと手を握り締めた。


「ほらね、ここ。塩入さんに教わった、リラックスのツボ」

「……まあ、マッサージって意味では上達してるかも」


負け惜しみのように聞こえる圭斗の声が、とてもとても新しい。


なんだか、どうしてこんなとこまで足を踏み入れたのか良くわからなくなって来た。


圭斗が自分のお店に引き抜いて連れて行くアシスタント。
香織に煽られるように興味が増してしまったけれど、それこそなんでそんな気分になったのか、自分でもよくわからない。


そして今、二人で『研修』をしてる姿を見て、少なくとも……私が思った以上に仲がいいってことは感じ取れてしまった。
胸が疼くように痛むのを感じて、私は訳がわからなくなる。


あの夜の圭斗の言葉から、『結婚』を連想したのは私だけど。
その相手がこの人なのかもしれない、って感じたら、怖いくらい胸がざわめいた。
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