指先からはじまるSweet Magic
「圭斗君にキスされて、拒まなかったなら、里奈は嫌じゃなかったんだよね?」

「っ……」


ゴクンと、息を飲んだ。


そうじゃない!と否定するのは簡単だけど、あの時ただドキドキして、圭斗の唇を受け止めた自分を思い出す。
手を両方のこめかみに移動させて、私は顔を下向けながら、黙って小さく一度頷いた。


そう、嫌じゃなかった。
ただ驚いて、ドキドキして……『どうして』って。
あの時感じたのは、本当にそれだけだった。


「なるほどね。だから私にアシスタントの子のことなんか聞いて来たんだ」


納得したようにそう呟いて、香織は黙っている私の反応を窺い見た。
そして隣の椅子に置いたバッグの中に手を突っ込んで、そこから一枚のハガキを取り出した。
それを静かに私の前に滑らせながら、ねえ、と頬杖をつく。


「里奈、圭斗君がどうして美容師になったか、ちゃんと聞いたことある?」


一度ハガキに目をやってから、え?と顔を上げた。
香織は優しい目をして私をジッと見つめている。


「やっぱりないか。それじゃあ、家に帰ったら小学校の時の卒業アルバム開いてみて」

「小学校……?」


高校じゃなくて?と首を傾げる私に、香織は、そう、と静かに頷く。


「そのハガキもらった時に、チラッと思ったんだけど……やっぱりそういう意味か~って、妙に納得出来ちゃった」


一人で納得してニヤニヤ笑う香織に、身を乗り出して聞き出したい気分だった。
だけど香織は、それ以上何も口にしようとしなかったから、私はただ差し出されたハガキをぼんやり見つめた。


それは、さっき香織がチラッと口にしていた、圭斗のサロン開店の挨拶状だった。
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