指先からはじまるSweet Magic
「……っ……!」


一気に蘇った記憶。
込み上げて来る想いに焦りながら、私は写真のペ―ジをすっ飛ばした。


圭斗のクラスは、二組。
色紙でクラスごとに仕切られた文集を大きく開く。
そして辿り着いた、小学生の時の圭斗の卒業文集。


『卒業に向けて。六年二組 塩入圭斗』


そんな題名の文集をただひたすら目で追った。
そして。


『僕は、みんなを笑顔にしてあげられる仕事をしたい。ちょっと前まで泣きそうだった子が、笑ってくれた。あの嬉しさを忘れられない。僕に出来ることって、なんだろう』


そんな文章に、グッと胸が詰まる思いだった。


ちょっと前まで泣きそうだった子。
それが私だと思っていいんだろうか。


自惚れかもしれない。
ううん、むしろ、今の今まで気付けなかったくらいだから、私じゃない別の誰かのことだと思いたい。


そう思うのに、私の心はあの時の圭斗の笑顔で溢れ返っていた。
あの時圭斗に向けた笑顔を、もう一度浮かべたいって思った。
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