指先からはじまるSweet Magic
リアルな純情と迸る想い
香織に借りたハガキには、今のサロンでの圭斗の最終勤務日が記されていた。
それからオープンまでの三週間は、新サロンでの予約のみ受け付けるという文言と電話番号が並んでいる。
そこにかけると、きっとアシスタントの細川さんが対応してくれるんだろう。


昨日の夜まで待ったけど、ここ連日と同じように圭斗は家に帰って来なかった。
確実に圭斗に会うには、最終勤務日にサロンに行くのが手っ取り早い。


ただの幼なじみのまま、あらゆる意味で離れて行くのは絶対に嫌。
強くそう思ったから、ちゃんと向き合って話したい。
これ以上先延ばしにしたら、焦れて狂ってしまいそう。


今日逢えなくても二度と逢えない訳じゃないのに、私はまるで今生の別れを前にしているかのような気持ちで、朝から必死に仕事をこなした。


お昼の休憩でデスクから離れるのすら時間が勿体なくて。
コンビニのおにぎり片手に書類を捲る私は、誰から見ても鬼気迫るものがあったと思う。


なのに……急いだあまり、クオリティを保てなかったのか。
定時間際になって、提出した書類にリテイクがかかった時は本当に泣きそうだった。


私のミスだから、やらない訳にはいかない。
壁の時計をチラチラと気にしながら、なんとか手直しを終えて課長からOKをもらった時には、もう午後八時を過ぎていた。
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