指先からはじまるSweet Magic
店内から呼び掛けられる声に短い言葉で応えてから、圭斗はゆっくりドアを締めた。
そして、一人、深々と頭を下げる。


そんな圭斗の姿に、いろんな思いが胸に湧き上がって来て、私はグッと唇を噛んで立ち尽くすことしか出来なかった。


どのくらいそうしていたか、圭斗は大きく顔を上げる。


吹っ切る、というか。歩き出す、というか。
軽く目線を下向けて振り返りながら、通りに足を踏み出そうとした圭斗が。


「……っ……」


数メートル前で立ち尽くしていた私に気付いて、ピタッと足を止めた。


「……里奈?」


戸惑う、というより怯えたように揺れる瞳に、ほんの少しだけ傷付いた。


だってこの一ヵ月の間、私と同じように、圭斗も私を避けていたってこと、それだけでわかってしまったから。


お互い様だけど。
それもこれも、圭斗が私にあんな目をしてあんなことしたからなのに……!
そう思うと、なんだか無性に悔しい気分になる。


「……お疲れ様」


天邪鬼な気持ちに駆られて、私は軽く腕組みして圭斗に短くそう告げた。


「ああ、うん。……サンキュ」


荷物のおかげでほとんど稼働域なんかないというのに、圭斗はぎこちなく頭に手をやろうとした。
そのおかげで、腕から零れ落ちていた花束がグラッとバランスを崩す。


「あ」

「ちょっ……圭斗っ」


バサッと足元に落ちる花束に気を取られて、私は無意識に圭斗に駆け寄っていた。
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