初恋の甘い仕上げ方
「毎日こんなに遅い時間にひとりで歩いてるのか?」
「……そうだけど」
「ったく、樹は何やってるんだよ。俺には萌がどこに引っ越したのかも言わねえし」
翔平君は小さく舌打ちし、怒りの矛先を兄さんに向けた。
兄さんが私の引っ越し先を言わないのはきっと、翔平君に片思いしている私を気遣ってのことだろう。
私がひとり暮らしをしている場所を知れば、心配性の翔平君のことだから、毎日でも私の家にやってきてはいろいろ世話をやくに違いない。
そうなればきっと、私がさらに苦しむと思い、黙っているに違いない。
「兄さんは、私がこれ以上翔平君に頼らないようにって考えてるんだよ、きっと」
「は? シスコン極まりないあいつにそんなこと言われても、説得力ないだろ」
ぶつぶつとつぶやきながら歩く、翔平君の子供っぽい様子に安心する。
昔から知っている翔平君が目の前にいる。
仕事で大きな結果を出し、その名を知られるようになった翔平君。
そのせいで遠い存在になってしまったと寂しく思うときも多いけど、再び近づけたように感じて嬉しくなる。
とはいっても、これ以上近づいてはいけない現実を思い出し、再び私は冷静になる。