お隣さんと内緒の恋話
チャイムが鳴り、クラス中から安堵の声が漏れる。
私は脱兎のごとく 壮真の席の前に立ちはだかった。
「 げ、椿っ… 」
「 なぁに、壮真~ ちょっと顔貸しなさいよっ」
逃がしてやんないからね!
「 な、なんだよ… 」
「 ほら、いいから来なさいよ、ほらぁ 」
私は壮真のカバンを持ち 香伊羅と笑里を呼んだ。
壮真を挟むように両側には香伊羅と笑里。
まだ静かな玄関に来ると、壮真に確かめる。
「 壮真さ、私の事避けてるよね? なんで? 柚奈はどうして休んだわけ?」
「 壮真、言いなよ!」
「 柚奈に何したの!」
3人に詰め寄られる壮真は眉間を寄せながら うなだれる。
「 俺… 柚奈に嘘ついて ちょっと… 」
「 ちょっと、何よ 」
「 だから、他の女と… 」
他の女と!?
「 あんた最低… とことん最低!」
「 仕方ないだろ!柚奈は好きだよ、でも束縛は嫌なんだよっ 毎週会うのも… 連れとだって遊びたいし、柚奈にだけって無理だろ 」
言っている事はわからなくもないが、恋する女のすべての心を踏みつけにされたようで、私だけでなく 香伊羅と笑里も、壮真に怒りをぶつけた。
「 壮真、あんた柚奈を何だと思ってんの!立場が逆なら あんた どうすんのよっ 」
「 だから!柚奈とは別れたんだよっ 」
え…… 別れた?
「 逆だったとしても 結局 ケンカばっかになるだろうし、お互い傷つくもんだろ?だから、別れたよ 」
うそ、柚奈… そんな事…
壮真は 柚奈を頼むと言って帰っていった。
その場で私たち3人は少しの間 動けなかった。
「 椿、香伊羅… どうする?柚奈、かわいそう…」
笑里、わかってるよ、わかってる。