アサガオを君へ
パッと上を向くと、ヘヘッと笑う夏樹がいた。


あ、今、生きてる感じがする。


私が転けかけてサッと出た、ふつうの男の子よりも細い腕。


おかしそうに寄せる眉と、細くなる目。


外はこんなに暑いのに、何故だかひんやりとした体温。


夏樹は誰よりも『生きている』。


人はいつも忙しい。


スタスタと歩いて、やるべきことをこなしている。


学校にも仕事にも行かずにダラダラと友達と遊んでいる人たちも、遊ぶことに忙しい。


人は決められた時間の中で、いつだって忙しくしている。


でも夏樹は人よりもはるかに短い時間の中で、ただ普通に淡々と過ごしている。


自分のスピードで、たまに立ち止まったり、たまに寄り道したり。


ゆっくり歩いたかと思うと、早歩きになって、終いには走り出す。


とても普通に日々を堪能している。


この世界の人たちには難しい普通を、誰よりもそつなく当たり前にこなしている。


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