アサガオを君へ
そんな夏樹のことをみんな、急いで!とか、何考えてるの?って疑問に感じて、時には否定する。


あたかも夏樹が異常だと言うように、指をさす。


私から見れば、この世界の人たちのほうが異常なのに。


人よりも短い時間しか与えられていない夏樹が急がずに生きているのに、何でみんな急ぐんだろ?


絶対に夏樹よりも倍の時間があるのに。


マイペースで普通な夏樹が誰よりも綺麗で価値がある。


今私を助けたこの行為だって、きっとできない人の方が多いんだ。


転んだって知らんぷり、声をかけてもそれだけ。


もっと言えば、私が転けて、初めてつまずいたことに気付く。


ちょっと余裕を持って生きれば、きっと転ける前に分かるのに。


綺麗なのは夏樹だけだよ。


きっと誰もが認める画家が描いた最高傑作の絵を前にしても、その絵を世界中の人が一番綺麗だって言っても、わたしには綺麗なのは夏樹だけ。


「お前、落ち着けよ」


呆れたような声を出す夏樹。


夏樹の周りだけ、いつも嫌いなこの世界が何よりも愛おしくて綺麗に見える。


本当に何もいらない。


夏樹だけいてくれたらそれだけでいい。


どうか神様お願いです。


新しい命を増やすくらいなら、夏樹との時間を1秒だけ増やしてください。


私の目に1秒でも多く夏樹を見せてください。


こんな最低で最悪なことを考えている汚い私の隣に、どうか少しでも夏樹をいさせてください。
< 101 / 224 >

この作品をシェア

pagetop