アサガオを君へ
静かな廊下から響く足音と共に、ガラッと勢いよく開いたドア。


嬉しい、夢みたい。


私は目をつむったまま言った。


「栄治。なに?」


これが夏樹ならそう思えたのにな。


「あれ?絶対に騙されたって思ったのに」


パッと目を開けて顔を上げると、そこには笑いながら近づいてくる栄治がいた。


栄治は私の目の前の椅子に座ると、微笑んだまま言った。


「何で分かったの?声は完璧だったと思うんだけど」


私は栄治から少しそれた、夏樹の席を見つめて言った。


「声はそっくりだよ。本当にそっくり。でも、夏樹は私の名前を廊下からは呼ばないよ」


私よりも学校で2人で関わることを避けている夏樹が、そんな誰が聞いてるかわからないような廊下で私の名前なんて絶対に呼ばない。


少し乾いた唇を、もう一度開いた。


「夏樹なら教室に入ったあとに私の名前を呼ぶ。それに、足音が違う。夏樹の足音は、他の人の足音とは違うから」


心地よい独特のリズム。



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