アサガオを君へ
そんな小野さんの背中を、私は見送りながら軽くため息をついた。


そしてスタスタと歩いて一番奥の病室の扉を開けた。


もう夏も終わって肌寒くなってきたのに、窓は全開。


真っ白のシーツの中に包まるように目をつぶった夏樹が、窓に背を向けて入り口に体を向けた状態で寝ていた。


私は、ホッと安心して、なるべく音を立てないようにベッドに近寄る。


夏樹のベッドに寝るときの癖は、必ずベッドの端で寝ること。


だから夏樹のベッドはいつも、もう1人寝転がれるくらいのスペースがぽっかりあいている。


私はそのスペースに腰をかけて夏樹の背中を見る。


そして部屋の壁に掛けられた時計を見て時間を確認する。


午後2時。



私は鞄から読みかけの小説を取り出して、ベッドに背を預けるように座り直した。


夏樹が起きるまで、小説を読んでいよう。
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