アサガオを君へ
無視なんてしなかった。


堂々と私に話しかけてきた。


堂々と私をいじめた。


他の人みたいに、私を見えないふりなんてせずに。


私が初めて夏樹以外で、興味が持てた男の子だった。


みんな、私が大嫌いだった。


でも、殴ったり蹴ったりはしなかった。


それが自分の評価にひびくからだ。


そんな他人の評価を気にせず私をいじめる松崎くんとは、少しずつ話すようになった。


松崎くんは、よく私のものをどっかに隠した。


靴とか。


カバンとか。


でも絶対に、私が大切にしているものは隠したりしなかった。


夏樹に貰ったものは特に。


松崎くんは良く不満そうな顔をして私の隣で言った。


「お前の大好きで大切な宮野は。お前がこんなにいじめられてても、助けたりしないんだな」


私は松崎くんに落書きされた教科書を開きながら言った。


「それが夏樹だから。私もそれを求めてないし」


私たちは端から見たらすごく異様な関係だったと思う。


いじめられっ子、いじめっ子。


なのに、なんだかんだと言って私たちは仲が良さそうにも見えた。


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