アサガオを君へ
だから、あの日。


彼は賭けに出た。


もう、私をいじめてあげることができない彼は。


すごく考えて考えて思いついたんだと思う。


でも結局、現れたのは夏樹じゃなくておじさんだった。


私は暗闇が怖いんじゃない。


私は……。


ギュッとアッキーの裾を掴む手に力を入れた。


「私は、暗いことが怖いんじゃない。あの日。助けに来てくれなかった夏樹のことを思い出すから、暗いところが怖いの」


助けに来てくれなくて当たり前なのに。


ちゃんと分かってるのに。


どうしても暗いところにいると、嫌な感情が溢れてくる。


何で夏樹は私のことを助けてくれなかったんだろう。


何でだろう。


何でだろう…。


そんなことばっかり考えてしまうから、嫌だ。


暗いところから出れたとき。


そこにいるのは夏樹じゃない。


その事実が怖くてたまらないんだ。
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