アサガオを君へ
でも頭の中に散らばったまま飛び出そうとした汚い言葉は、発せられなかった。


いつのまにか後ろの扉は開いていて、後ろから口をおさえられたから。


後ろを向かなくても。


声を聞かなくてもわかる。


この体温は夏樹だ。


「橋本さん。悪いけど、もうそれだけやったら、十分に気は済んだろ?」


突然の夏樹の登場に、すっかり青ざめた橋本さんは呆然と夏樹を眺めている。


それを見て夏樹は私の口から手を離して、代わりに私の腕を掴んだ。


「行くぞ」


私は何も言わず夏樹に手を引かれた。
< 76 / 224 >

この作品をシェア

pagetop