アサガオを君へ
そのまま引っ張られて向かった場所は教室じゃなくて、私のアサガオが置いてある古い小屋だった。


中には継ぎ接ぎだらけのソファーが置いてある。


夏樹はそこに座ると、私を見た。


今日初めて目が合った。


そして笑った。


「泣くなよ。いいから座れ」


そう言われて、ポタポタ涙がこぼれたのがわかった。


私はゴシゴシと袖で頬をぬぐいながら言った。


「ごめん。ちょっと久しぶりにキレて、興奮した」


私のその言葉にブハッと夏樹は吹き出した。


「昔からキレると口悪くなるし、泣くよな」


隣に腰掛けながら、私はコクっと頷いた。


一度だけ夏樹に本気でキレたときがあった。


中学に入ったばかりのとき。


夏樹は遊びの延長で制服のままプールに飛び込もうとした。


後から聞いたら仲間内の罰ゲームだったらしい。


ちょうど私は学校で飼っているウサギに餌をやっているとき、たまたまプールに人影が見えた。


よく見ると夏樹だったことに、私は血相を変えてプールサイドのフェンスを飛び越えた。


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