一年の華
少女の思い
***
こちらを見た村瀬くんは、すぐに私から目を逸らした。
そして長い沈黙。
「…天気っ。」
空を見て村瀬くんが言った。
「天気いいなっ。」
「…うん、そうだね。」
何故天気の話をするのかは分からなかったが、とりあえず返答しておく。
そして黙りこんだ村瀬くんは、再び顔を上げた。
「もうすぐ台風の季節だなっ。」
「…うん、そうだね。」
「………。」
「……。」
いつまで経っても本題に入らない村瀬くんを無言で眺めていると、チラッと視線が私に向いた。
「…佐々木と宮代は……許嫁同士だって本当のことなのか?」
何故その事を知っているのか驚き、一瞬だけ思考停止する。
どこで知ったのか不思議に思いながら徐に頷くと、村瀬くんは目を見開いた。
「…そうなんだ…。」
膝の上で頭を伏せた村瀬くんは、顔を上げずに呟くように言った。
「……どっか行って。」
「でも…」
「用件は済んだんだからさっさと帰れよ。」
低くなった声と冷たいその態度で、私はその場を黙って立ち去ることしかできなかった。
鞄を取りに早足で教室に戻ると、翔が机に座りながら私を待っていた。
「あ、未琴。どこ行って……。」
話しかけてきた翔の言葉が途切れ、教室が静まり返る。
翔が私の頬に触れてきて、顔が涙で濡れていることに初めて気付いた。
私は泣いていた。