一年の華




***


「お邪魔しました。」

「またおいでね、マサヒロくん。」

「ありがとうございます。」

ナツキとナツキのお母さんの玄関までの見送りに応えながら俺はナツキの家を出た。

自宅に向かいながらナツキとのやり取りを思い出す。

ナツキが打ち明けようとしたところで、飲み物のおかわりを持ってきてくれたナツキのお母さんが部屋に入ってきて、ナツキとの会話が途切れたのだ。

ナツキのお母さんが出ていってから会話を再開させたが、流れで言おうとしていたナツキは我に返って結局話してくれなかった。

二度目はガードが固くなるだろうから、ナツキのアキトに対する感情を知ることができる可能性は格段に下がる。

ナツキのお母さんが悪いわけではないから責める気にはなれないが、落胆の気持ちはやはり大きい。

こうなったら自分で解明するしかない。

今までのナツキに関する記憶を使って。

まずは記憶を掘り起こさなければ。

自分の家に着き、すぐ自分の部屋に向かう。

押し入れを開くと、幼稚園から中学までの写真や卒業アルバムが綺麗に整理されていた。

幼稚園の頃の物は関係無いものと判断し、小学校のアルバムから順に見ていく。

一年だったときの写真を見ると、中学まで一緒だった友達が幼い姿で撮られていた。

写真の中の同級生の名前を心の中で呟きながら見ていく。

ナツキの写っている写真でページを捲る手を止めた。

まるで小さな人形のようだ。

そして両隣には俺とアキト。

三人で仲良く笑っている。

「いつから何かが変わったんだ…?」

二年、三年、四年………。

小さなことも見逃さないようにじっくり見ていく。

でも写真のナツキは何も変わっていなかった。

学年が上がっても、俺とアキトを横につけて笑顔を見せている。

とても幸せで楽しそうだった。

「…あれ?誰だ…?」

五年生の野外学習の写真。

一泊二日の旅行の最中に撮られたもの。

こっちを見てピースサインをするナツキの横で微笑む、ナツキにも劣らない美少女。

旅行中の他の写真を見ると、俺達3人とさっきの美少女が仲良さそうに写っている。

覚えていないはずがない。

これだけ目立つ子、途中で転校しているにしても、小五なんてつい最近だ。

幼稚園の頃のように記憶があやふやな訳じゃない。

六年生の時の写真を見るが、その子が写っている写真が一つも見当たらない。

四年生も見直すが、やはり一枚も無い。

五年生の時の一年間だけいた天使のような少女。

この子がナツキの感情に関係あるとしたら…。

俺は少女の顔が分かりやすい写真を何枚か選び出し、携帯のカメラに収めた。


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