一年の華
パサッ、パサッ、カシャッ、パサッ、パサッ、カシャッ…。
紙とホチキスの音が薄暗い部屋の中に響く。
向かいに座る佐々木を見ると、白く細い指で器用に作業をこなしていた。
「どうしたの?」
もう俺には顔を隠す気がないらしく、二人だけの今は、髪を掻き分けている。
そのため、どうしてもそっちに目がいってしまう。
その視線に気付いた佐々木は、長い睫毛ごしにこっちを見た。
佐々木の印象が不気味からミステリアスに変わる。
「いや…何で隠すのかなって思って…。」
佐々木の質問にそう答えると、それまで動いていた滑らかそうの手がピタリと止まり、表情が固まった。
「別に言いたくないなら…。」
「きっと理由を話しても信じないよ。だから内緒。」
佐々木はクスッと妖艶な笑みを浮かべた。
「…信じるから教えろよ。」
「ダメ。」
その後、俺達は一限目が始まるまでに仕事を無事終えた。
結局、最後まで理由は教えてくれなかったが、教室に戻る頃には友達のように打ち解けあっていた。