一年の華
***
「マサヒロー、科学のプリント見せてー。」
自分の席に着いて本を読んでいたマサヒロに近付くと、ジロッと睨まれた。
「少しは自分でやれよ。今日は見せない。先生に怒られて少しは懲りろ。」
「じゃあいいよ。友達はお前だけじゃねえからー。」
イラッとして佐々木の席に向かう。
「佐々木ー。科学のプリントやった?」
佐々木は静かに頷いてプリントを差し出した。
「サンキュー。…あーあー、やっぱりマサヒロくんとはちがうなあ!」
マサヒロに聞こえるように言った俺に佐々木は俺だけに聞こえるような声で小さく笑いを漏らすと、立ち上がって教室を出ていった。
「せっかく佐々木さんに借りたんだから、急いでやれよ。」
溜め息と共に聞こえた声に振り向くと、本を持ってマサヒロも教室から出ていこうとしていた。
「また図書室にいくのか?」
「ああ。今読み終わったから。」
マサヒロがいなくなると同時に俺は科学のプリントにとりかかった。
佐々木の字は、慣れていたマサヒロの字とはまったく違ったが、読みやすい綺麗な字だった。