きれいな恋をしよう
 フミオと別れて夜道をほてほてと歩く。
 風が涼しいのであまり暑いとは感じないものの、湿気がしっかりからだにまとわりついているようで、いつの間にか静かに汗が流れてきた。
 信号なんかにひっかかって立ち止まると、それは一気に吹き出た。

 途中、商店街にさしかかると、ほとんどの店のシャッターは下りているというのに、人だけはやけにおおい。
 
 きっと電車がさっき駅についたのだろう。
 終電だったのかもしれない。
 みんな、駅から放射状に広がる道なりに、やはり放射状に散っている。
 それは歩いているというよりもなにかに《導かれている》という表現がぴったりのような気がして、どことなく参列者の列を想像させた。

 家の電気が点いている。散歩もかねてのんびりと歩いてきたから、もう2時近いだろう。玄関をあけて2階へ上がると、妹がソファに腰かけて本を読んでいた。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop