きれいな恋をしよう
「なんだ、おまえまだ起きてたのか」

「なに、お兄だっていま帰ってきたんじゃん」

「べつに責めてるわけじゃねーよ。夏休みだしな。どんどん起きろ」

 おれは冷蔵庫をあける。
 麦茶を期待していたのだが、その期待のはるかうえを行く『午後の紅茶』があったので、さっそく氷を限界まで入れたコップを作って注いだ。
 入る量はもちろん少なくなるが、そういう問題じゃない。
 温度が大切なのだ。

 おれはテーブルに紅茶を置き、椅子をひいて腰かけた。
 その椅子を寝床にしていたらしい飼い猫がにゃ~と鳴いて椅子から跳びおりた。

「またコチンダさんとかと会ってたの?」

「きょうはフミオとふたりきりだな」

「ふたりきりですか。ロマンチックな夜だったねえ」

 おれはぞわっとした。

「フミオがもうすこし痩せてて、顔がかわくて、女だったらそうだろうな」

「ああああ!」

 妹が叫んだ。
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