きれいな恋をしよう
「いまが26時だってことを忘れるなよ」

「お兄もそれ、紅茶! わたしのだってこと忘れてるでしょ」

「忘れたっていうか。初耳だよ、わるかったな」

 おれは妹の指摘を無視して、きんきんに冷えた午後の紅茶をひと口すすった。
 ほんのりとした爽やかな甘みと苦味が、絶妙におれの舌にからんだ。
 やはり紅茶は午後ティーに限るね。

「だから飲まないでっていってるでしょ!」

「いってない」

「明日午後練に持っていこうと思ってたのにー…」

 妹ががっかりした演技をした。
 なぜ演技だとわかるかというと、まあ人の演技なんてだいたいわかるものだが、妹はほんとうにがっかりすると無口になるのだ。
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